世界の動向

持続可能な金融システムの実現と企業の社会的な役割

世界の不確実性が毎年、話題となるのが、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の場です。持続可能な金融システムの実現と企業の社会的な役割の変化、すなわちゲームチェンジによって、経済リスクより、環境、社会、テクノロジーに脚光が集まっています。企業の社会的な役割が高まる中で、企業を支える株主・投資家行動にも急激な変化があるのは、前章の機関投資家の最新動向でも触れた点です。機関投資家のスチュワードシップ責任が再定義される中で、企業自らが利害関係のあるステークホルダーに対し、コーポレート・ガバナンス責任を果たしていく潮流は、ゲームチェンジに際し、世界的な企業の企業理念やビジネスモデルといった長期的な視点での再定義(例えば、GEやシーメンス)に及び始めていると言えます。

IIRCによる国際統合報告フレームワーク発表以降、様々な企業報告の分野では変化の波が起きています。IIRC自らも、2016年12月、ロンドンにおいて、IIRCは、機関投資家を中心とした団体、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)と共同カンファレンスを実施し、2018年2月にも、東京で連続共同開催する等、フォローアップ活動を活発化させています。国際的なトピックスである、国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)以降、パリ協定が提唱され、金融安定理事会(Financial Stability Bord :FSB)は、気候関連財務ディスクロージャータスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)を素早く発足させたように、気候変動の問題を、持続可能な金融システムから捉え直すエンパワーメントが働いていると言えましょう。こうした動きは、米国SASB (Sustainability Accounting Standards Board:サステナビリティ会計基準審議会)にも先取りして見られます。SASBでは10産業セクター、約80種類の年次報告書において開示する非財務情報の基準項目やKPIを策定し、ブルームバーグやロイターといった2大金融情報端末といったテクノロジーで投資家に提供されています。これらの動向は、GPIFのようなユニバーサル・オーナーという立場からすると、既存の画一的な・株価指数や議決権行使を選定した運用機関に委託したのみではスチュワードシップ責任を果たしたとは言えず、かつすべての資産クラスにESGを統合的に適用する場合、それらの懸念を早急に解消する必要性があると言えましょう。

世界の動向を踏まえると、欧州連合(EU)の金融・資本市場に係る包括的な新規制MiFID 2(Markets in Financial Instruments Directive 2)の影響や機関投資家の受託者責任に対し、日本のみが取り残されるわけにはいきません。したがって、投資先企業のコーポレート・ガバナンス改革の深化への機関投資家の後押しは、日本の経済政策の一丁目一番地としたことと合致した動向と言えましょう。

グローバル
  国連持続可能な開発会議 (リオ+20)の開催:国際連合/ブラジル政府
アジェンダ21の選択:国際連合
国際統合報告フレームワーク の公表: IIRC
PRI報告フレームワークの公表: PRI
投資家・企業のサステ ナビリティ戦略の公表: グローバルコンパクト/PRI
統合報告テクノロジーイニシアティブの発足:IIRC
企業報告ダイアログの発足:関連機関によるコンソーシアム
G4・EU指令ガイドブックの公表:GRI
COP21パリ協定の採択:国際連合
持続的成長に向けた金融システム調査報告書の公開:国連環境計画(UNEP)
グローバルリスク報告書の公開:WEF
アジェンダ2030の採択:グローバル・コンパクト
GRIスタンダードの公表:GRI
気候関連財務ディスクロージャータスクフォース設立:金融安定理事会(FSB)
Renewable Energy 100%:The Climate Group
SBTイニシアチブ:CDP,WRI,WWF,UNGC
G20ハンブルク・サミット
持続可能な投融資の国際研究連合
グローバル・グリーン・ファイナンス・インデックス
持続可能な漁業への投資原則
Natural Capital Protocol Toolkit:自然資本連合/WBCSD
欧州
  改正透明性指令の制定:欧州連合(EU)
非財務情報および多様性の 開示に関するEU指令の制定:欧州連合(EU)
非財務報告ガイドライン:欧州連合(EU)
人権報告フレームワークの公表:UNGPs、Shift
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:ユーロネクスト・グループ
持続可能な金融ハイレベル専門家会合が最終報告書:欧州連合(EU)
持続可能な金融行動計画:欧州連合(EU)
紛争鉱物に関する規制(EU)
  英国
  「記述報告の将来」の公表:英国BIS
ケイレビューの公表:英国BIS
戦略報告書開示指令の制定:英国BIS
戦略報告書ガイドラインの公表:英国FRC
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:ロンドン証券取引所
競争力と生産性向上に向けた政府計画の公表:英国財務省、英国BIS
現代奴隷法の制定:英国内務省
生産性向上に対する支援表明:英国機関投資家
フランス
  2001年新経済規正法
非財務情報開示を非上場企業に拡大する法改正
ヘルスケア分野の情報開示の義務化:フランス大統領府
ヘルスケア分野の情報開示 義務の実施細則の公表:フランス大統領府
フロランジュ法の制定:フランス大統領府
気候変動リスク関連情報開示の義務化:フランス大統領府
ESG情報開示方法の公表:フランス国民議会
SRIラベル認証制度の導入、指針発表:フランス大統領府
人権デュー・ディリジェンス 法の制定
イタリア
  非財務報告 指令の 国内法化ため指令の 国内法化ため指令の 国内法化ため立法命令
ドイツ
  株式取得・処分の通知公開義務の強化:ドイツ証券取引所
開示ベストプラクティス・ガイドラインの公表:ドイツ証券取引所
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:ドイツ証券取引所
株式取得・処分の通知義務・罰則の強化:ドイツ証券取引所
CSR指令実施法の制定
スウェーデン
  GRIガイドラインの義務化
公的年金運用におけるESG投資強化の表明:スウェーデン公的年金基金AP3
サステナブルボンドリストの公表:ナスダック・ストックホルム
持続可能な証券取引所 イニシアティブに参加:ナスダック・ストックホルム
デンマーク
  デンマーク財務諸表法改正、上場金融機関にも行政命令
EU非財務報告国内法を制定、デンマーク財務諸表再改正
オランダ
  EU非財務報告国内法による勅令の制定
児童労働に関する人権デュー・ディリジェンス・開示義務法案(予定)
スペイン
  持続可能な経済に関する法律
ルクセンブルク
  EU非財務報告国内法を制定
米国
  SEC、紛争鉱物開示規則
全世界売上高が 1億米ドルを上回る企業を対象にカリフォルニア州サプライチェーン透明化法
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:ナスダック
持続可能な証券取引所 イニシアティブに参加:ニューヨーク証券取引所
サステナビリティ会計基準の策定、ガイドラインの公表:米国SASB
アジア
  オーストラリア
  ASXコーポレートガバナンス原則及び勧告第3版:オーストラリア証券取引所
オーストラリア版スチュワードシップ・コード:金融サービス協議会
シンガポール
  コーポレートガバナンスコードの改訂・制定:シンガポール金融管理局
株主のエンゲージメント強化に向けた上場規程の改訂:シンガポール証券取引所
内部統制ガイドラインの制定:シンガポール金融管理局
責任ある投融資ガイドラインの策定:シンガポールSAB
サステナビリティ情報開示規則にて主要5項目の情報開示義務:シンガポール証券取引所
タイ
  CG原則のアセアンCG スコアカードへの適用:タイ証券委員会
資本市場の持続的な成長に向けた3カ年計画の策定:タイ証券取引所
持続可能な開発基金TSDFの設立:タイ証券取引所
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:タイ証券取引所
マレーシア
  コーポレートガバナンスコードの改訂・制定:マレーシア証券委員会
内部統制宣言の公表:マレーシア証券取引所
ESG指数の公表:マレーシア証券取引所
サステナビリティ情報 開示の諮問書の公表:マレーシア証券取引所
サステナビリティ報告ガイドの策定:マレーシア証券取引所
中国
  CSR報告制度の整備:国務院国有資産監督管理委員会
中央企業の社会的責任の履行に関する指導意見の交付:中国共産党
内部統制ガイドラインの公表:深圳証券取引所
上場企業社会的責任ガイドライン:深圳証券取引所
CSR評価準則の策定:中国企業評価協会
上場企業環境情報開示ガイドライン:上海証券取引所
炭素効率インデックスの公表:上海証券取引所
香港
  新会社条例に基づき取締役報告書にて非財務情報を開示
ESG報告ガイドの策定:香港証券取引所
ESG開示の義務化:香港証券取引所
台湾
  コーポレートガバナンスセンターの設置:台湾証券取引所
コーポレートガバナンスインデックスの公表:台湾証券取引所
GRIに基づくCSR報告の義務化:台湾証券取引所
韓国
  非財務情報開示システムの導入:韓国環境省
ガバナンス情報開示の強化:韓国証券取引所
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:韓国証券取引所
インド
  事業責任報告書の義務化:インド証券取引委員会、ボンペイ証券取引所、インド国立証券取引所
持続可能な証券取引所イニシアティブに参加:ボンベイ証券取引所
インド会社法改訂によるCSR義務化:インド企業省
温室効果ガス排出量 の測定基準を公表:ボンベイ証券取引所等

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