統合報告の背景

世界の大手年金基金の資産総額、3%減で、14.8兆米ドルに

世界トップ300の年金基金の資産総額は2015年に3%減の14.8兆米ドルとなり(2014年は3%超)、世界トップ300の年金基金が年金基金の資産全体に占める割合は42%にのぼったとしています。
(「P&I / タワーズワトソン グローバル 300」2016/9)

同調査によれば、世界の年金資産の国別シェアは引き続き米国が最大で、全体の38%を占めています。日本は12%前後で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に因るところが大きいと言えます。同基金は過去10年に亘り世界首位の座を維持しており、約1兆1,163億米ドルの資産を保有しています。シェア3位は6%超のオランダで、ノルウェーと英国はそれぞれ6%、5%となり、それぞれ4位と5位、6位にランク入りしています。過去5年間で、新たに25基金がトップ300にランク入りしており、ネットベースでは、英国、韓国、オーストラリア、フランス、ペルー、ベトナム、イタリアの寄与が大きく、メキシコは損失が目立ったと言えましょう。各国別では、米国が131基金と占め、カナダ、オーストラリア、日本、オランダのランクイン順に変更はありません(別表参照)。

世界の保護主義貿易や地政学的リスクが高まる中、グローバルな潮流として、持続的な企業価値創造に向けたインベストメント・チェーンの全体最適化、すなわち過度なショートターミズムに対する政策的な対応、企業と投資家との対話が加速しています。2015年11月、PRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)は、アセットマネジャーに対するデューデリジェンス上でアセットオーナー(LP:Limited Partners)がESG関連の投資の取組みについて確認すべき質問項目(クエスチュネア)のガイドランを公表し、ESGファクターのみならず、投資哲学・運用体制に本格的に影響を及ぼしたと言えましょう。2016年1月、PRIに署名済のアセットオーナーの経営陣・幹部をメンバーとする「アセットオーナー・アドバイザリーコミッティ(Aseet Owner Advisory Committee)」が発足し、日本からも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も参画し、アセットオーナーらによる投資活動をテーマに、具体的な議論を重ねています。同年2月、PRIは、米国労働省によるエリサ法上のESGファクターの法的解釈を好意的に評価し、法律事務所と連携して、ESGファクターの取扱いの詳細な情報を示す「エリサ法におけるESGファクターの整理(Addressing ESG Factors Under ERISA)」を公表し、米国においても、PRIのポリシーに反しない旨、周知されることになり、米国や欧州では大手年金基金の(自家運用を除く)運用委託争奪戦が繰り広げられる展開になっています。PRIの署名数もアセットオーナー、アセットマネジャー、サービスプロバイダーの署名が年々増加しており、2016年4月16日現在、1,500の署名が集まっています。

年金基金トップ20(単位:百万ドル)

順位 基金名 地域 2015年運用残高
1 年金積立金管理運用独立行政法人 日本 アジア太平洋 $1,163,203
2 政府年金基金 ノルウェー 欧州 $865,943
3 連邦公務員向け確定拠出型年金 米国 北米 $443,328
4 国民年金公団 韓国 アジア太平洋 $435,405
5 公務員年金基金(ABP) オランダ 欧州 $384,271
6 全国社会保障基金 中国 アジア太平洋 $294,939
7 カリフォルニア州職員退職年金基金 米国 北米 $296,744
8 中央積立基金 シンガポール アジア太平洋 $211,373
9 カナダ年金制度 カナダ 北米 $201,871※1
10 厚生福祉年金基金(PFZW) オランダ 欧州 $186,471※2
11 カリフォルニア州教職員退職年金基金 米国 北米 $181,875
12 地方公務員共済組合連合会 日本 アジア太平洋 $176,160※2
13 ニューヨーク市公務員年金基金 米国 北米 $173,541
14 従業員積立基金 マレーシア アジア太平洋 $161,707
15 ニューヨーク州職員退職年金基金 米国 北米 $155,120
16 フロリダ州管理理事会 米国 北米 $147,819
17 テキサス州教職員退職年金 米国 北米 $125,327
18 オンタリオ州教職員年金基金 カナダ 北米 $123,985
19 デンマーク労働市場付加年金 デンマーク 欧州 $106,640
20 政府職員年金基金(GEPF) 南アフリカ その他 $103,147※3

※1 2016年3月31日現在
※2 推定
※3 2015年3月31日現在

こうした状況の中、世界中で、中長期的な視点に立った企業価値創造のプロセスを訴求する、統合報告を通じて、脱ショートトターミズムに向けた情報開示の進展が見られる状況にあります。新CEOのRichard Howitt氏のもと、IIRC(International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会)はより国際舞台と各国の活動をリンクさせながら、パブリックコメント募集を通じて、実務的なエビデンス&アイデアを収集中です。

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